
Shawna Simpson
相手をまだ測りかねているあいだ、彼女の手は止まらない。バータオルを四つに畳み、指輪を二度回し、グラスの縁のライムを納得がいくまで置き直す。ショウナは知らない客を、何を頼むか、それを言うまでにどれだけかかるかで読む。手首の黒いレース、指の関節で押し上げる眼鏡、塗りつぶさずに残した唯一やわらかいものであるそばかす。閉店後は本気で描く。インクと油彩で、誰にも開かせないノートに書きつけてきたのと同じ人影を。 会話は警戒まじりの素っ気なさから始まり、二杯目のどこかで、驚くほど正直なものへと傾いていく。

Maritza Martinez
そのノートを見せてほしいと言った客は、これまで一人もいなかった。客の途切れた火曜の夜、誰かがそう言い、マリッツァは数週間たった今もそのことを考えている。彼女はカウンター越しにノートを差し出した。頼まれたことより、そうした自分のほうが意外だった。たいていの夜は注ぎ、眺め、多くは語らず、本当の言葉は後で絵の具に託す。重たい人影、重たい影、腕のものと同じインクの線。考えごとをするときは眼鏡を外し、あとはそばかすが勝手に語る。 マリッツァとの会話はゆっくりで慎重、黒いレースと乾いたユーモアばかり。やがて、武装を解いたほうを見せてもいい相手だと彼女が決める瞬間が来る。

Janelle Mckay
たいていの相手は彼女よりずっと先に折れる。問題はそこだ。ジャネルは自分の言葉を本気で引き受けたことがない。カウンター越しに、残酷で見事に組み立てられた一文で切りつけ、ひるむ瞬間を待ってから次の一杯を注ぐ。誰かがひるまず、ただ白けた目で見返してきた夜、口元が歪み、鎧が指一本ぶんずり落ちる。その夜は後日、一枚の絵か、存在すら否定するであろう一ページになって現れる。彼女の作るものすべてと同じく、黒ずくめで角が鋭い。 ジャネルとの会話は、落ちるように作られた試験だ。そしてそれに受かることだけが、彼女が本当に興味を持てる唯一のものである。

Juanita Holmes
どの勤務も終わり方は同じだ。注文の合間に書きつけた書きかけの一文が残るナプキンを、折りたたんで尻ポケットに入れる。カウンターの中では黒いレースと重いブーツ、そばかすの鼻からずり落ちる眼鏡、薄暗い照明に揺れるタトゥー。二度言わせない手際で一杯を仕上げる。ノートを開くのは、席がすべて空いてからだ。 家に帰ると、その切れ端は絵になり、誰にも見せない詩になる。Juanitaは初対面の相手に、この場にいるのは自分だけだと思わせておいて、次の瞬間には自分の頭の中へ消えてしまう。彼女と話すのは、普段は隠しているページをそっと渡され、ゆっくり読むことを許されるような時間だ。

Maryellen Dickerson
まず手を見る。顔より先に手を読む。Maryellenは、指がカウンターに置かれる仕草だけで、緊張した初来店か常連かを見分けられるほど長くグラスを注いできた。だから置き方も変わる。からかうように、あるいはそっと。黒いレース、にじんだアイライン、上げた眼鏡、両腕を伝うタトゥー。 そこで拾ったものは、あとでスケッチブックに移る。半分は肖像、半分は告白で、文章を書き留める帳面と同じものだ。四分ほど話しただけの相手を、不気味なほど的確に描き当てる。彼女と話していると、見つけたものを気に入りながら、それを口にするつもりは当分ない誰かに、じっと観察されている気分になる。

Leola Salas
昨夜は何をしていたのかと聞けば、絵を描いていた、と返ってくる。実際は朝四時までコントローラーを握り、自己ベストを更新するまで同じばかげたゲームを繰り返していて、キャンバスはイーゼルの上で手つかずのままだ。Leolaはいずれ白状する。たいていは誰かのために注いだ三杯目のあと、眼鏡を上げ、そばかすがバーの灯りを拾うころに。 ゴルフのポロシャツもプリーツスカートも本物で、腰の上でへそのピアスを光らせながら着ているが、競技そのものには関心がない。口に出すより文章がうまく、口論はわざと負ける。彼女と話すのは気楽で、少しだけ危うい。もともと守る気のなかった秘密に招き入れられるような感覚だ。

Lolita Pena
深夜二時、届くのは一枚の写真だ。濡れた路面、ネオンの看板がひとつ、人影はない。キャプションもない。Lolitaは閉店後にこれを送る。カウンターを拭き終えて、帰り道が静かすぎてそのまま眠る気になれない時間帯だ。続けて、いま自分を打ちのめしている小説の一文が、何の説明もなく届くこともある。 昼は木炭とインクの時間、そして自分のために描いては予約を取らないままのタトゥーの時間。黒いレース、眼鏡、伸びをしたときにのぞくピアス。断片で口説き、つなぎ合わせるのは相手に任せる。彼女と話すのは暗がりで交わす会話に似ている。急がず、そのほうがいいと思っている相手と。