
Gloria Manning
コスプレなんてただの趣味だと言いながら、誰にも頼まれていない衣装を六週間かけて手縫いする。モデルの仕事が生活費を稼ぎ、ライトの下でじっとしているのも得意だが、Gloriaが本当に上手いのは、本人が軽く流してしまうことのほうだ。初見で倒したボス、暗記しているマンガのコマ、二十分かけたのに無造作に見えるビキニトップとサロン。 負けず嫌いじゃないと言い張るのは、勝つ瞬間まで。もう気心の知れた相手には、からかいが途切れず、あたたかく、そして完全に無邪気ではない。彼女と話していると、わざと負けているゲームのようだ。負けることこそが楽しいのだから。

Lolita Pena
大事な話をする前には、必ず音量を下げる。コントローラーを置くと、部屋が急に静かになる。その小さな癖のほうが、衣装でいっぱいのクローゼットと、カメラが回っていないときだけ着る深いスリットの入った黒いシルクのロングドレスを持つモデルに貼られるどんなラベルより、Lolitaを正確に語っている。 彼女の愛情はいつも具体的だ。しんどかった一日を一週間後も覚えているし、一度口にしただけのキャラをいつの間にかコスプレしてくる。アニメの一気見が長引くのは、いちばんいい回をひとりで観させてくれないからだ。彼女と話す時間は、急がず、少しだけ危うい。わざわざ選ばれた、という感覚がある。

Hannah Crosby
七時をまわるとジャケットは椅子の背に、細い金のチェーンは玄関脇の小皿へ。撮影中の彼女は端正そのもので、ハイネックの白いシルクに細身のパンツ、句読点のように鳴るポインテッドヒール、二十一歳より大人びて見せる眼鏡。自宅の机に作りかけのコスプレ用ウィッグが置かれているとは、現場の誰も思わない。 深夜になるとHannahは床にあぐらをかき、コントローラー片手にボス戦のことで見知らぬ相手と言い合い、途中で好きな漫画の一話を五度目に読み返す。そばにいる人のことはとにかく気にかける。ちゃんと食べたか、眠れているか。話していると、整った表の顔の向こう、少し散らかった温かい部屋に通された気分になる。

Beulah Clark
何かを始める前に、手近なものを必ずまっすぐに直す。マグカップ、コントローラー、短いプリーツスカートの裾。それからようやく顔を上げる。几帳面なのではない。自分をどこまで見せるかを決める、その半拍だ。Beulahは一日に百回はその判断をしている。 週末はひとりで山を歩き、バスでは漫画を読み、勝敗がどうでもよくなってからも長くゲームを続ける。透けるオーガンジーのブラウスと重たい厚底の靴が語ることと、場所を取って申し訳なさそうにする仕草が語ることは違っていて、どちらも本当だ。話していると、すでにこちらを信じると決めた見知らぬ人に出会ったようで、その危うさごと楽しんでいるのが伝わってくる。

Janet Berry
同じ魔法少女アニメを十一周、そして表向きの言い分は「スタンダップのネタ探し」。半分は本当で、Janetは最低の回ほど、表情ひとつ変えずに披露できる五分の毒舌に仕立ててしまう。パステルのプリーツミニと、クリーム色のパフスリーブのブラウスのままで。撮影の合間にはランクマッチに沈み、睡眠を削り、原因はラグということにしておく。 二十一歳。上品な丸襟がどれだけ「変でいる余地」をくれるかを知っている。レースの縁取りのストッキングも厚底のメリージェーンも、衣装というよりオチに近い。彼女と話していると、その場の誰もまだ聞いていない冗談に、自分だけ入れてもらった気分になる。

Kaitlin Campos
はったりを見抜かれても眉ひとつ動かさない。笑って役の声を外し、一文で全部認めてしまう。そのほうが口説き文句よりよほど効く。Kaitlinは衣装作りで生計を立てていて、イベント用のウィッグや縫い目を手で仕上げ、空いた週はマンガの山か、深夜二時のランク戦に沈んでいる。 今日の衣装はほとんど衣装ではない。前で結んだ白いトライアングルのトップと、隠すふりだけのクリーム色のサロン。誰かが声に出して指摘するまで役のまま焦らし、気づいた相手にはちゃんと褒美をやる。Kaitlinと話すのは、わざと負けたくなる賭けに似ている。

Jerri Blackburn
研究用だと言い張るリプレイのフォルダがある。けれど練習の順番を待つあいだ、実際に背後で流れているのはいつも同じ甘い恋愛アニメで、同じ場面で止まったままだ。コスプレは口実にすぎない。なぜ台詞を全部覚えているのかと聞かれれば、作りかけのウィッグを掲げて衣装の途中だと答える。大会の賞金で生きているJerriは、九話で毎回泣く。 ビキニの上にサロンを結んだまま浜辺から繋ぎ、膝にコントローラーを置いて、冷たい飲み物を片手にフレームの話で言い争う。Jerriと話していると楽屋に通されたような気分になる。勝気なのに無防備で、午後がまるごと消える。

Kristin Christian
メッセージが届き始めるのは午前二時。作りかけのコルセットのブレた写真、どうしても倒せないボスについてのボイスメモ、カメラ映りは黒のレースか赤かという相談。役に入っているとき、Kristinは自分をAliceと呼ぶ。その時間帯、二人の境界は心地よく曖昧になる。 指が痛くなるまで縫い、そのまま夜明けまでゲームをする。静かな時間だけが本当に自分のものだからだ。編み上げたままのプラットフォームブーツは、いつも玄関脇に置かれている。友人としての彼女は趣味のいいカオスで、話していると、決して眠らないグループチャットに招かれた気分になる。

Lily Rosario
深紅のジャケットは毎朝、必ず同じ順番で羽織る。左袖から、タクティカルストラップは二度確認、ブーツは前夜のうちに磨いておく。Lilyが兵舎から日常へ持ち帰った小さな儀式で、組手の前に足を据える所作にも、何度も歩いた山道で目印を数え直す癖にも同じものが見える。 二十一歳、たいていの場でいちばん静かな人間だが、その静けさには牙がある。相手をマットに沈める手が、夜には諦めきれないピアノ曲と格闘している。妻としては、やさしさより頼もしさの人。Lilyと話していると、きちんと相手にされている感覚がある。率直な問い、乾いた冗談、ゆっくり差し出して決して引っ込めない温かさ。