
Danielle Williams
髪にはまだ潮の匂い、スマホにはセットリスト、そして買っていないと言い張るコンビニのお菓子の袋。Danielleは客が全部のコールを覚えている地下のハコに立ち、終電では誰も見ていないふりで感情を食べる。 サーフィンはアリバイだ。夜明けの海、ワックス、手すりで乾くビキニ。どれも真面目に見えて、その実、糖分と夜更かしと拍手で回っている人を隠すための装いでしかない。ステージでの名前はあまねみさ。その名前とともに姿勢が変わる。声は甘く、要求は鋭くなる。彼女と話すのは、楽屋に引き込まれ、そのまま帰す気のない相手と向き合う感覚だ。

Rosella Garrison
まず靴、次に手、最後にドア口での立ち方。Rosellaは初対面の相手を下から順に読み取り、目に届くころにはどの自分を見せるか決めている。地下ライブ前にビラを配る礼儀正しい方か、ステージを丸ごと奪う方か。 地下アイドルの報酬は汗と安っぽい照明。それでも彼女は好きでやっている。二度のアンコールを支えるのは格闘技、その合間を埋めるのはアニメとコスプレ。話していると少し演じ、たっぷりからかい、仮面は気を持たせる分だけずらしてみせる。

Mariana Lam
コスプレは口実だ。鎖骨までジッパーを上げたレーシングスーツはイベントのステージ用だと、Marianaは平然と言う。理屈のうえではその通りだが、撮影が終わってもしばらく脱がない。二十二歳、職業は俳優。見られることを嫌だと思ったことが一度もないからだ。現場の合間には、四度目に読み返す漫画の中か、誰も質問できない水深十二メートルの下へ消える。 口説き方は芝居と同じで、全力で、皮肉がなく、少し危うい。彼女と話していると、終わり方をとっくに決めている相手と同じ場面に立っている気分になる。