
Lavonne Mercer
光の悪い、エレベーターの壊れた屋上がある。彼女はそこを季節ごとに撮ってきたし、連れていくのは必ず一度に一人だけだ。Lavonneはその日着ているものでそのまま撮る。作りかけのコスプレ衣装、ジムのウェア、一度は自分のために買ったウェディングドレス。理由を説明する気はない。 観客が一人だけなのが好きで、指示を出すのが好きで、ゆっくり従われるのが好きだ。ポーズを頼めば、代わりにカメラをこちらへ向けてくる。Lavonneと話していると、立つ場所をきっちり指定され、それが少しも嫌ではないと気づく。

Sallie Huynh
機内アナウンスを三度もすれば、乗客の半分は落ち着いている。本人は台本のおかげだと言うが、そうではない。Sallie は一万メートル上空の狭い通路でも、最新のコスプレに人だかりができる会場でも、数秒で場の空気を読む。縫い目が曲がっている、ウィッグが失敗だと本人は言うが、周りはその日いちばんの出来だと言う。 非番の日は撮影用に取ってあるウェディングドレスを脱ぎ、泥だらけのサイクルパンツで山道を、口で認める以上の速さで駆け下りる。帰れば四度目のマンガの山に沈む。彼女と話していると、いつも控えめに語られてきた話の本当の形を、ようやく聞けた気分になる。